皆さん、こんにちは!簿記の世界へようこそ! めたん先生です。
前回までで、現金の増減を伴う基本的な取引について学びました。今回は、いよいよ企業のメインステージ、商品売買について詳しく見ていきましょう。
この講義では、商品売買の基本的な取引を5つに分けて説明します。
- 掛け取引:商品を売ったり買ったりしたけど、お支払いは後でまとめて、という取引です。
- 手付金:商品を手に入れる前に、一部のお金を先に支払う、または受け取る取引です。
- 返品:売った商品や買った商品を、何らかの理由で返してしまう取引です。
- 商品売買に伴う諸費用(当社負担):商品を売買する際に、送料などを自分が負担する取引です。
- 商品売買に伴う諸費用(先方負担):商品を売買する際に、送料などを相手が負担する取引です。
これらの取引をマスターすれば、あなたはもう立派な簿記屋さん!一緒に頑張りましょう!
掛け取引(ツケ払い)
掛け取引って、後払いってことなのだ? つまり、ツケ払いみたいなものなのだ?
その通りです、ずんだもんさん。掛け取引とは、商品を売り上げたり仕入れたりした時に、代金の支払いを後回しにする取引のことです。例えば、急ぎで商品が必要な時や、まとまったお金を用意するのが難しい時などに利用されます。
ツケ払いってことは、借金が増えるってことだよね。でも、借金は後でちゃんと返さないといけないんだよね?
その通りです、つむぎさん。掛け取引をすると、債権と債務が発生します。債権とは、お金を受け取る権利、債務とは、お金を支払う義務のことです。ツケ払いは便利ですが、後で必ず支払いが発生することを忘れないようにしましょう。
売上側の会計処理
掛け売上時
- 商品を掛けで売り上げた場合、お金は後で受け取りますが、売上は発生しているので、貸方に記入します。
- 同時に、代金を受け取る権利である売掛金という資産が増えるので、借方に記入します。
掛け代金回収時
- 掛け代金(売掛金)を回収した場合、お金が増えるので現金勘定を借方に記入します。
- 同時に、売掛金という資産がなくなるので、貸方に記入します。
仕訳例
当社は、得意先B社に対して商品100円を掛けで販売した。
(借) 売掛金 100 (貸) 売上 100
後日、上記掛け代金100円を現金で受け取った。
(借) 現金 100 (貸) 売掛金 100
仕入側の会計処理
掛け仕入時
- 商品を掛けで仕入れた場合、お金は後で支払いますが、仕入は発生しているので、借方に記入します。
- 同時に、代金を支払う義務である買掛金という負債が増えるので、貸方に記入します。
掛け代金支払時
- 掛け代金(買掛金)を支払った場合、お金が減るので現金勘定を貸方に記入します。
- 同時に、買掛金という負債がなくなるので、借方に記入します。
仕訳例
当社は、仕入先A社から商品100円を仕入れ、代金は掛けとした。
(借) 仕入 100 (貸) 買掛金 100
後日、上記掛け代金100円を現金で支払った。
(借) 買掛金 100 (貸) 現金 100
手付金(前金・内金)
手付金って、よく聞く言葉だけど、簿記ではどんな意味なのだ?
手付金は、商品を売買する前に、代金の一部または全部を前もって支払ったり受け取ったりするお金のことです。例えば、高額な商品を買う時や、人気の商品を確実に手に入れたい時などに、手付金を支払うことがあります。
手付金を支払うことで、商品を予約できるってことだよね。でも、もしキャンセルしたらどうなるんだろう?
キャンセルする場合の手付金の扱いは、契約内容によって異なります。例えば、売買契約が成立しなかった場合は、手付金を返還する必要があるかもしれません。一方、買い手が一方的にキャンセルした場合、手付金を放棄しなければならない場合もあります。この辺りは、法律の知識も必要になってくるので、注意が必要ですね。
売上側の会計処理
手付金受取時
- 商品を販売する前に手付金を受け取った場合、まだ商品は引き渡していないので、売上にはなりません。
- 代わりに、前受金という負債勘定を貸方に記入します。これは、将来商品を引き渡す義務があるからです。
商品引渡時
- 商品を引き渡した時点で、売上が計上できるので、貸方に記入します。
- 同時に、前受金という負債がなくなるので、借方に記入します。
仕訳例
得意先B社から商品100円の注文を受け、手付金として現金100円を受け取った。
(借) 現金 100 (貸) 前受金 100
後日、B社に対して商品100円を引き渡した。
(借) 前受金 100 (貸) 売上 100
仕入側の会計処理
手付金支払時
- 商品を仕入れる前に手付金を支払った場合、まだ商品を受け取っていないので、仕入にはなりません。
- 代わりに、前払金という資産勘定を借方に記入します。これは、将来商品を受け取る権利があるからです。
商品受取時
- 商品を受け取った時点で、仕入が計上できるので、借方に記入します。
- 同時に、前払金という資産がなくなるので、貸方に記入します。
仕訳例
仕入先A社に商品100円の注文を行い、手付金として現金100円を支払った。
(借) 前払金 100 (貸) 現金 100
後日、A社から商品100円を受け取った。
(借) 仕入 100 (貸) 前払金 100
返品
返品って、お店で買ったものを返すことなのだ? 簿記でも同じなのだ?
基本的には同じですが、簿記では、返品によって、なかったことにするという考え方をするんです。例えば、商品を売ったけど返品された場合、その売上はなかったことになります。
なかったことにするって、面白い考え方だね。でも、返品されたら、お金も返さないといけないよね?
その通りです、つむぎさん。返品があった場合は、売上や仕入をなかったことにするだけでなく、受け取ったお金を返したり、支払ったお金を返してもらったりする必要があります。この辺りも、仕訳でしっかりと記録していきます。
会計処理
- 返品があった場合、売上や仕入を取り消します。
- 具体的には、商品売買時の仕訳の逆仕訳を行います。
- 逆仕訳とは、借方と貸方を逆にした仕訳のことです。
仕訳例
100円で掛け販売した商品のうち、10円分が品違いのため返品された。
(借) 売上 10 (貸) 売掛金 10
100円で掛け仕入れした商品のうち、10円分が品違いであったため返品した。
(借) 買掛金 10 (貸) 仕入 10
商品売買に伴う諸費用 (当社負担)
商品売買に伴う諸費用って、例えばどんなものがあるのかな?
商品売買に伴う諸費用とは、商品を売買する際に発生する、送料や保険料、梱包代など、商品代金以外の費用のことです。例えば、ネットショッピングで商品を購入した時に送料がかかることがありますが、これも諸費用の一つですね。
なるほどなのだ。ボクも、通販でずんだ餅を注文した時に、送料がかかったことがあるのだ。でも、この諸費用って、誰が負担するのかによって、仕訳が変わるのだ?
その通りです、ずんだもんさん。諸費用には、当社負担と先方負担の場合があります。まずは当社負担の場合の会計処理を見ていきましょう。
会計処理
諸費用は費用として処理します。売上諸掛と仕入諸掛で、それぞれ処理方法が異なります。
- 売上諸掛:発送費勘定など、支払った内容が分かる勘定科目で処理します。
- 仕入諸掛:仕入勘定に含めて処理します。(発送費勘定などは使いません)
仕入諸掛を「仕入」勘定に含めて処理する理由は、商品を購入するのにかかった総額を「仕入」勘定で把握するためです。
- 「仕入」勘定の金額 = 購入代価 + 仕入諸掛
仕訳例
商品を2,000円で掛け販売した。なお、発送費50円を現金で支払った。
(借) 売掛金 2,000 (貸) 売上 2,000
(借) 発送費 50 (貸) 現金 50
商品1,500円を仕入れ、代金は掛けとした。なお、引取費用100円を現金で支払った。
(借) 仕入 1,600 (貸) 買掛金 1,500
(貸) 現金 100
商品売買に伴う諸費用 (先方負担)
諸費用って、相手方が負担する場合もあるんだよね? それはどんな時なのかな?
例えば、送料無料のネットショッピングをイメージしてみてください。送料はお店側が負担してくれていますよね。これが、先方負担です。本来、先方負担の諸費用は、当社には関係ありません。しかし、時には当社が一時的に立て替える場合があります。
立て替える? つまり、代わりに支払うってことなのだ? なんでそんなことをするのだ?
例えば、本来は取引先が負担するはずの送料を、間違えて当社が支払ってしまうケースなどが考えられます。このような場合、立て替えたお金は、後で取引先から返してもらう必要がありますよね。
会計処理
仕入諸掛
- 先方負担の諸費用を立て替えた場合、立替金勘定(資産)を使って処理します。
- 立替金勘定は、立て替えた金額を回収する権利を表します。
- ただし、立替金勘定と買掛金勘定を相殺して処理することもできます。
仕訳例
商品1,500円を掛けで仕入れた。なお、先方負担の引取費用100円を現金で立替え払いした。
(立替金勘定を使用する場合)
(借) 仕入 1,500 (貸) 買掛金 1,500
(借) 立替金 100 (貸) 現金 100
(買掛金勘定と相殺する場合)
(借) 仕入 1,500 (貸) 買掛金 1,400
(貸) 現金 100
売上諸掛
- 従来は、先方負担の売上諸掛を当社が支払った場合についても、立替金勘定を使って処理していました。
- しかし、2022年の試験範囲改定により、この処理は試験範囲外となりました。
まとめ
今回は、商品売買に伴う諸費用について学びました。
- 商品売買に伴う諸費用とは、商品を売買する際に発生する、商品代金以外の費用のことです。
- 諸費用には、当社負担と先方負担があります。
- 当社負担の売上諸掛は、発送費勘定などで処理します。
- 当社負担の仕入諸掛は、仕入勘定に含めて処理します。
- 先方負担の仕入諸掛は、立替金勘定または買掛金勘定との相殺で処理します。
- 先方負担の売上諸掛の処理は、試験範囲外となりました。
商品売買は、会社の主要な活動の一つです。それに伴う諸費用の処理方法をしっかりと理解しておくことが大切です。
商品売買の諸費用、色々あって最初は混乱したけど、先生が丁寧に説明してくれたおかげで、だいぶ理解できたよ! 特に、ツケ払いの例え話が面白かったな。でも、先生、ツケ払いしすぎて、借金で首が回らなくなっちゃうのは大変なことだよね…。
確かに、ツケ払いしすぎると、借金取りに追いかけられるかもしれないのだ…。先生も気を付けるのだ!
… えっと、そうですね、ツケ払いは便利ですが、計画的に利用することが大切ですね! 今日はたくさん学んだので、しっかり復習しておきましょう! … 例えば、諸費用は、例えるなら、旅行に行くときのお土産代みたいなもの。旅行自体(商品売買)とは別に、お土産代(諸費用)も予算に入れておかないと、後で大変なことになっちゃいますからね。
お土産代の例えは、まあ分かるけど… 先生、そのお土産、もしかして全部ずんだ餅になっちゃう系?
それは最高のお土産なのだ! ボクも、ずんだ餅をお土産に持って帰りたいのだ!
… えっと、そうですね、お土産は色々ありますが、ずんだ餅も喜ばれるかもしれませんね! それでは、今日はこの辺で終わりにしましょう。次回も一緒に簿記の冒険を続けましょう!
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Twitterで投稿するには約90文字に要約する必要があり、重要論点のアウトプットを行うことでより記憶に残りやすくなります。
要約ついでにこのサイトも紹介してくれると嬉しいな!
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